流氷の街、北海道紋別を代表する老舗ホテルである「紋別プリンスホテル」。
同社を率いる代表取締役 林孝浩氏は、1989年の開業と同時に25歳で支配人に就任。接客業に不慣れな父(創業者・先代社長)に代わって現場の指揮を執り、創業社長さながらに奮闘してきた。
2007年に先代からバトンを引き継ぎ代表取締役に就任した後も、現場を熟知する林社長は常に先頭に立ち、強力なリーダーシップで会社を引っ張ってきた。その経営スタイルは典型的なトップダウン。会社は着実に成長を遂げたが、一方で組織には小さな「ひずみ」が積み重なっていった。
このまま放置していれば数年のうちに大きな亀裂が生じるかもしれない……。そんな矢先――、コロナ禍で社会が一変する。観光業界の根幹である人の移動は制限され、宿泊予約のキャンセルが相次いだ。
今号では、ピンチをチャンスに変えるべく『事業承継を見据えた未来の組織づくり』に舵を切った同社の取り組みを紹介する。